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示談交渉を開始する時期

示談交渉は、原則として、被害者の方の交通事故による損害が確定した状態、つまり、もうこれ以上に損害は増えないと言う状態になり、損害賠償の算定が出来るようになった時点で開始します。

この示談交渉の開始時期は、被害者の被害の状況によって、大きく分けると下記の3つの場合があります。

1.被害者が死亡した場合
被害者のお葬式が終わると、交通事故に関する損害はないとされますので、示談交渉に入ることが出来ます。しかし、一般的には、四十九日の法要が終わった段階で示談交渉に入ることが多いです。

2.被害者の怪我が完治した場合
医者から完治を言い渡された場合や、被害者ご自身が納得して完治又は、それに近い状態と認めて 治療やリハビリを終了した場合は、それ以上の損害は発生しませんので、その時点で示談交渉に入ります。

3.被害者に後遺障害が残った場合

医者から症状固定(それ以上治療を続けても症状の改善が望めない状態) と判断された場合は、「後遺障害等級の認定請求」を行います。

後遺障害は、1~14級までの等級がありますが、必ずしも認められるわけではなく、「非該当」となる場合もあります。

この場合の示談交渉の開始時期は、後遺障害の等級が決定した後か、もしくは「非該当」 が決まった後になります。

*なお、示談交渉の開始時期は、法的に決まっているわけではありません。その為、加害者や保険会社が示談交渉に消極的で、損害額が確定しているにも関わらず、延び延びになって、なかなか開始できないことがありますので、早く示談をして解決したいとお考えであれば、 自ら積極的に動く必要があります。

また、逆に保険会社や加害者から、治療が完了していないにも関わらず、示談をせかされる場合がありますが、治療が終わるまでは損害賠償額は確定出来ませんので、余程の好条件であれば別ですが(その様な事はまずありません)、原則として応じるべきではありません。

準備書類で示談前に必要な物

示談では、ただ感情的に捲くし立てても、話は進みません。やはり、客観的に相手を納得させられるだけの資料を揃える必要があります。

交通事故の種類に応じて、下記のものをご用意下さい。

◆死亡事故の場合

1.事故証明書(自動車安全運転センターで発行してもらいます)

2.亡くなった方の除籍謄本

3.遺族の戸籍謄本

4.亡くなった方の生前の収入証明書(*下記ご参照下さい)

◎お亡くなりになった方が、即死では無く、治療期間を経た場合は、下の傷害事故の場合の書類も併せて必要になります。


*収入の証明書
収入の証明書は、被害者側にとって、最も大切な書類です。収入の証明が出来ない時は、例え実際には収入があったとしても、収入は無かったことにされてしまいますので、ご留意下さい。

・サラリーマン(公務員や会社員)のケース

被害者が公務員や相当の規模以上の会社のサラリーマンであれば、勤務先の給与明細書や源泉徴収票があれば、それだけで証明が出来ます。

しかし、勤務先が零細企業等の場合は、源泉徴収票等にプラスして納税証明書も必要です。

理由としては、 源泉徴収票等は、会社の印鑑を押して作ることから、会社の信用が低い場合には、源泉徴収票の信用も低いことから、加害者側を納得させるために公的な証明である納税証明書も付けます。


・自営業、自由業等のケース

納税証明書や、確定申告書の写し等の税金関係の書類で収入を証明します。

この場合に問題なのが、申告額が実際の収入よりもかなり少なくて、本当はもっと収入が多い場合です。その様な時は、預金通帳や帳簿類、取引先の証明書、保険の掛金の領収証等の証明となるあらゆる書類をかき集めて実際の収入額を証明するよりほかありません。


・主婦のケース

専業主婦で、実際には収入を得ていなくても「賃金センサス」と言う年齢や学歴に応じた収入基準がありますので、その基準によって算出した金額を提示します。

仕事を持っている主婦の場合は、賃金センサスと給与証明等のうち、高い方を選んで使用します。


・アルバイトや失業者のケース

スポット的なアルバイトでは難しいですが、長期間勤務をしており、安定的な収入があった場合は、給与証明等を用意して証明します。

また、失業者であっても、求職中で、事故に遭わなければ仕事がほぼ決定するはずであった場合は、そのことを証明する書類を用意出来れば、「賃金センサス」と言う年齢や学歴に応じた収入基準額を請求出来ます。

なお、次の仕事が決定していた場合は、決定していたことを証明する書類と、そこからもらえるはずであった給与額を証明する書類を用意して下さい。 


◆傷害事故の場合

1.事故証明書(自動車安全運転センターで発行してもらいます)

2.病院の診断書と診療報酬明細書(*下記枠内をご参照下さい)

3.負傷した人の勤務先の休業証明書と収入証明書(*上記枠内をご参照下さい)


*診療報酬明細書

入院日数や、通院期間、通院実日数、使用した薬や注射、治療費等の明細が記入されていますので、慰謝料を算定する為に、絶対に必要になる書類です。

示談交渉前までに必ず揃えなければなりませんが、作成の手間が掛かる為、請求をしてから出来上がるまでに一週間から一ヶ月程待たされることがありますので、余裕を持って早めに 準備をするようにして下さい。

損害賠償金請求の内訳

示談交渉をするにあたって、被害者の方は、損害賠償金としてどのような名目で請求出来るのかを知っておく必要があります。

まずは、交通事故のタイプごとの損害賠償金の項目を最低限、押さえておいて下さい。

◆死亡事故の場合

1.( 亡くなる前までに要した)医療費

2.(亡くなる前までの期間があった時の)休業補償 

3.遺失利益(事故に遭わなければ、将来、当然得られたと思われる利益のこと)

4.慰謝料(入通院慰謝料と死亡慰謝料の両方を請求出来ます)

5.葬儀関係費

6.雑費・交通費


◆傷害事故(後遺障害無)の場合

1.医療費・付添看護費

2.休業補償(有給休暇を使用した場合は、その分を請求出来ます)

3.慰謝料(入通院慰謝料)

4.雑費・交通費


◆傷害事故(後遺障害有)の場合

1.医療費・付添看護日・介護料

2.休業補償

3.後遺障害による遺失利益(事故に遭わなければ、将来、当然得られたと思われる利益のこと)

4.慰謝料(入通院慰謝料と後遺障害に対する慰謝料の両方を請求出来ます)

5.雑費・交通費・建物改造費等


◆物損事故の場合

1.物の修理費(自動車の時は、修理費の他に、格落ちに対する費用も含まれる)

2.営業補償(自動車の時は、休車料や代車料)

示談をする時の注意点

示談交渉をする場合に、頭に入れておきたい最低限の注意点がありますので、下記ご留意下さい。

◆後遺障害の可能性について

ケガの回復が思わしくなくて、後遺障害が残る可能性がある場合は特に、示談の条件に後遺障害を含むかどうかを明確にしておく必要があります。

つまり、将来的な可能性を含めた全損害を把握した上での示談であるかどうか、ということです。

仮に、後遺障害を含まず、現症のみを対象にして示談をする場合は、「将来、後遺障害が発生した場合は別途協議する」旨の文言を記載するようにした方が無難です。


◆示談当事者の行為能力について

示談の相手が、未成年者や被後見人の場合は、法律上の行為能力者ではありませんので、示談の締結は出来ません(示談をしても、無効であるとして取り消される可能性があります)。

この場合は、相手方の親権者や後見人と示談をする必要があります。  なお、未成年の親権者と示談を締結する場合は、親権者全て(通常は父母の両方)の記名捺印が必要ですのでご注意下さい


◆時効の問題

治療が長引いている時は、時効の問題に注意する必要があります
被害者側からの損害賠償請求権は、事故日から起算して3年で時効になります。

また、自賠責保険の保険金請求権は、原則として事故の翌日から2年で時効になります。ただし、後遺障害がある場合は症状固定日(継続加療しても症状改善の見込みがないと診断された日)の翌日、死亡については死亡日の翌日が起算日となります。

時効を中断させる為には、保険会社所定の書類で申し出る方法や、内容証明郵便によって催告を行う方法等があります(内容証明で行う場合は、書面が加害者側に到達した日から6ヶ月以内に裁判上の手続きを行わなければ、請求日に遡って時効中断の効力が無くなってしまうので、ご注意下さい)。


◆示談書に執行力(強制力)を付ける

通常の示談書は、私文書ですから相手が約束を守らなかった場合に、直ちに相手方の財産を差し押さえて競売をするようなことは出来ません。

この場合は、示談書を証拠書類として裁判を起こして、判決(和解調書や調停証書でも可)を貰ってからでないと、相手方の財産を差し押さえて競売にかけることは出来ません。 

しかし、示談書を「公正証書」にすることによって、約束が守られない場合は、裁判をせずに、直ちに相手方の財産を競売することが出来る執行力を持つことになります。

特に相手が、任意保険に加入していない場合は、リスクが大きくなりますので、公正証書による示談書にしておくと手間が省けて安心です。当事務所では公正証書による示談書作成のサポートも行っておりますので、お気軽にご相談下さい。

交渉による示談が決裂した場合

示談交渉がまとまらなかった場合でも諦める必要は無く、まだ他にも要求を実現する道があります。

次の手段としては、交通事故の紛争処理を行う「財団法人交通事故紛争処理センター」か「財団法人日弁連交通事故相談センター相談所」を活用して、和解(示談)のあっせんをしてもらいます。

「あっせん」がまとまらない場合は、その上に複数の専門家で構成される「審査」という機関があり、この審査の結果には被害者は不服なら従わなくても良いですが、損害保険会社(共済)は従わなければならないことになっています。

では、この2つのセンターのうち、どちらを選んだら良いか?ですが、これは「審査」の強制力の及ぶ範囲に違いがあることから、相手方の保険(共済)の種類によって使い分けます。

◆財団法人交通事故紛争処理センターの審査の強制力が通用する対象
1.示談代行付自動車保険
2.JA(農業協同組合)の自動車共済
3.全労災(全国労働者共済協同組合連合会)のマイカー共済

◆財団法人日弁連交通事故相談センター相談所の審査の強制力が通用する対象
1.全労災(全国労働者共済協同組合連合会)のマイカー共済
2.教職員共済生協の自動車共済
3.JAの自動車共済
4.自治協会・町村生協の自動車共済
5.都市生協の自動車共済
6.市有物件共済会の自動車共済
損害保険会社は対象外です。

2つのセンター共に言えることですが、被害者の味方をする為の機関ではなく、あくまでも中立な立場でのあっせんをする機関なので、センターを利用すれば何とかしてくれるだろうという他力本願の姿勢ですと望んでいる結果を得られない可能性があります。

こちらの要求を納得してもらえるだけの客観的な資料や書類を戦略的にいかに用意出来るかが、カギを握ります。出来れば専門家に一度は目を通してもらうと良いと思います。

さて、ここまでやっても、妥協点が見いだせない場合は、最後の手段として裁判所のお世話になるしかありません。

裁判所では、「調停」か「裁判(訴訟)」かを選択出来ます。

一般的には、話し合いの余地が残っているようであれば「調停」を、全く話にならない場合は「裁判」をしますが、率直なところ、調停をする調停委員が交通事故に詳しくない場合が少なくなく、センターの審査で決着がつかない場合は、最初から裁判にした方が早い場合が多いです

なお、損害賠償請求の金額によって、利用する裁判所は違ってきます。

請求金額が140万円以上の場合は地方裁判所、140万円未満の場合は簡易裁判所になり、更に60万円未満であれば1日で裁判が終わる「少額訴訟手続」というものがあります。

裁判というと、凄く大袈裟に聞こえて、とても自分の手には負えないとお考えになるかもしれませんが、手続きの方法等は裁判所で聞けば丁寧に教えてくれますので、複雑な案件でなければ十分ご自身だけでも出来ます。

特に、請求金額がそれ程大きくない場合には、弁護士を使えば費用倒れになる可能性がありますので、「本人訴訟」を視野に入れる必要があります。

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